●ごあいさつ 盛夏 皆様如何お過ごしですか。お見舞い申し上げます。 西日本表日本は猛暑。東北裏日本の水禍。狭い日本でも大差です。 被害の多かった地方の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。 どうかくれぐれもご用心下さいませ。 毎年、当研究所のぶどうをお求めいただき大変有難うございます。 今年のぶどうの作柄は、春から日照に恵まれた事とスタッフ一同の 愛培の努力が稔り、目下凄く順調に育っています。今月14日にや っと袋かけを終えました。今後、予期せぬ災害がなければ、きっと 皆様にご満足いただけるステキなぶどうをお届けできるものと期待 しております。どうぞ本年もよろしくお願い申し上げます。 ●とっても頑張った事 @安心して食べられるぶどうを… 毎年ですが、病害虫を防ぐための農薬の使用量を最小量にして効果 を高める事を一番に考えました。ハウスは雨による病気は生じませ んが、乾燥すると空気伝染するウドンコ病が大敵です。4ミリの防 鳥・防虫ネットを通る小さな害虫もそうです。メッシュを小さくす れば通風不良で病気がでます。そのため、越冬病害虫の根絶を目指 して、発芽前の木の掃除と消毒、発芽後からの観察−発見−初期防 除の徹底に努めました。 スタッフも観察力が向上し、発見の都度、すぐ局所を小型スプレー で防ぎました。(500ccのペットボトルを利用・簡易スプレー) □使用農薬 *部分使用 病気−トリフミン・サンドファンM 害虫−コテツフロアブル・アドマイヤー・モスピランを局部だけに 使用しました。 *全面散布(3月から7月に使用した農薬) 3/15 ベンレート+オマイト=発芽前の総合防除 4/2 トリフミン+オルトラン=発芽初期 ウドンコ病、細害虫防除 5/8 アミスター+モスピラン=開花前 腐敗病類 諸害虫防除 5/27 ロブラール+スプラサイド=結実後 腐敗病類 諸害虫防除 6/24 マイトコーネ+オルトラン=ダニ類・イラガ防除 *今後の予想 病気発生の心配はないものの、害虫主として葉を傷めるハダニ類・ スリップス類・トビイロトラガ等には、全面散布の必要が予想され ます。(果実は袋を掛けているので汚染の心配はありません) A美味しいぶどうを… ★堆肥の大量使用と土壌改良 何時もお知らせをしておりますが堆肥による地力培養こそが美味し いぶどうを育てる栽培方法だと考えています。 最近の高齢化・省力化・施設化に伴い、根域制限栽培・培養液肥栽 培・生育促進調整資材等々多くの農法が提案されています。それぞ れ長短があり、理論的にも軽視できないものもあります。現に私も 利用したりテストしたりしています。 しかし現在、大地を使った自然との共生の中、経営という経済活動 と消費者あっての商品生産である限り、より自然の理に沿うべきだ と思っています。 農業者の高齢化、肉体的重労働を敬遠する時代、果たして打ち出の 小槌があるものでしょうか。外観的にはともかく当所のぶどうが持つ 微妙な味を楽しんでいただけたら幸いです。 ★ハウスのフィルム更新(2号ハウス) 光線の透過を良くするため、4年でフィルムを順次更新しています。 4月中旬にプロに依頼しました。やはり生育が促進されますが、高 温障害も心配です。 ★土壌水分の調節 潅水 梅雨明け後の高温多照が続く現在、5日間隔で潅水しています。不 足すると日中の葉は活力低下。激しい時は根元に近い葉から黄化し 落葉へと進みます。庭の鉢物と一緒ですね。過湿も大敵です。 ★樹勢・樹姿の管理 美味な果実は、光合成能力の高い葉が房数に応じて十分な面積があ る事、そして光合成による炭水化物が十分果実全部に送られ貯蔵さ れる事です。そのため、地力に応じた樹冠の拡大・棚の上の枝葉の 配列・結実させる量の調節を要します。しかし、毎日見ていても理 論どおりにならないのがぶどう作りの難しさです。 B生産コストの低減を… 私達の必須課題として努力しています。今春は細霧防除機を入れた り、念願の動力電源をつけたりしました。また地力増強用作業機・ 殺菌可能な電解水製造装置など欲しい物が次々に…。 しかし、枝葉や果実の成長に合わせた技術的な管理は、経験豊かな 質の高い労力がより多く必要です。今以上の省力化は、今まで築き 上げて来た誇りと特徴を放棄することになるため、なかなか変えら れないものです。 ●雑感 ◎作業前のミーティングを春から始めました。毎朝その日の仕事の 内容とぶどうの生長する姿との関係について話し合いました。回を 重ねるほどにスタッフのぶどうを見る目が変わりました。 「見る」は「観察」に、「疑問」は「質問」にと、ぶどうの手入れ が点から線へと進歩し始めました。失敗も成功も1年に1回の経験 しか出来ません。それだけに大切な勉強でした。 桃で接木の勉強もしましたが、みなさん100%成功でした。本気で 取り組んでくださっています。ご家庭にぶどうを植えたスタッフお 二人。今年は初なりです! ◎暑いハウスでの作業中、選挙カーから流れる話題は年金問題。だれ 一人増税以外財源を増やすために国や国民の生産性をどうするかと いう事は話されませんでした。打出の小槌があるわけではないのに… と私のような高齢者心配するのは薮蛇でしょうか。 ◎私の住む瀬戸町でも、農業後継者不足・不耕作地の増大等、農業 経営は深刻です。国の食糧自給率の向上、自然環境の保全、食農教 育の推進等、農業振興のために農業の果たす役割は大きく啓蒙され てきました。しかし、さらに私の主張したいことは、農業・農村の 持つ人間教育の素晴らしさが隠れている事を忘れてはいけないと言 う事です。戦後、奇跡とも言われる日本の発展の原動力は、農村社 会が育てた素晴らしい人間の資質です。農業の衰退は、日本の未来 を担う青年と能力の喪失に連らなるのではないでしょうか。 ◎全国ぶどう懇談会 来る8月18日〜19日、当研究所を集合場所にして、全国でぶど う栽培に燃えている有志が集まります。 「これからのぶどう農家の課題」を論じ、新品種の情報交換や優秀 農家の見学など研修会を開催する予定です。 ◎本当に美味しいぶどうを選んでください 当研究所が苦心の末、開発した「瀬戸ジャイアンツ」(桃太郎ぶど う)が話題になり始め、今年は消費者からも市場からも注目を浴び ています。百名近い生産者も出来ました。しかし既に「どんなので もいいから出荷してくれと市場から言われたから…」とか「少々悪 くでも今なら売れるから出せばいいと言われたから…」とか何とも 悲しい声が栽培農家から届きます。このぶどうを開発した私は残念 でなりません。 ぶどうのことが本当に分かっている仲買人もおられるはずなのに…。 大丈夫かなと心配になり始めました。同一品種とは思えないほど 出来・不出来の差が生じています。オレオレ詐欺ではないにしても どうぞ本当に美味しいぶどうをお求めになられますように、皆様も ご研究下さい。 ●お詫び 1日研修をご希望の方が7名。(岡山1名・倉敷2名・瀬戸4名) 楽しみにしておりましたが、親族の訃報が入り中止。また来年を 楽しみにいたしております。 ●総合学習 「瀬戸町江西小学校」の4年生88名が勉強に来ています。 *1回目…袋かけの時期=1房50粒前後になった房に驚き、その 理由を聞いて納得。それぞれの願いを果実袋に書いて、袋を掛ける 実習をしました。 次回は収穫の時期に1回と収穫後の作業を1回勉強します。 (2004年7月18日 花澤 茂記) ●編集後記 皆さんからは注文書はまだかとの問い合わせが相次ぎ、お便りの発 送を急ぎました。(手書きファンの皆様ごめんなさい。) ハウスが2箇所になり、仕事の量が倍増。以前は2時間もあったら 書いていたお便りがさっさと書けなくなったのです。 次回はもっと編集方法などPCの勉強をしておきます。とりあえず みんな元気で一山乗り越えました。ありがたいことです。頑張ります! 10月中旬に入ったら、園内をご案内する余裕が出来ます。どうぞ ご来園下さいませ。 ただ、見学予定が入る事がありますので、必ず事前にご連絡くださ いますようお願いいたします。 連絡先=日中は畑にいる場合が多いので、自宅の電話は「留守番電 話」にしています。 *ぶどうの栽培関係のご質問は、 茂−携帯電話(090−3636−8837) *ぶどうの見学・販売関係のことは 睦子−携帯電話(090−3631−4436) E-mail wine6250@po7.oninet.ne.jp (平成16年7月22日 花澤睦子記) 続き(第19号PDF形式)を読む 前(第18号)へ戻る 第18-2号PDF形式