●ご挨拶 ”さまざまの事思い出す桜かな” ご無沙汰ばかり致しました。ご一家皆々様にはいかがお過ごしでい らっしゃいますか。御伺い申し上げます。 昨年はぶどうの収穫が予想より遅れまして、大変ご迷惑をおかけい たしました。その上、いつもの不手際も減りませず本当に済みませ んでした。 それにも拘わりませず温かいお言葉やお便りなどをいただきまして 誠にありがとうございました。 若い者達の手助けを得ながら一つずつ改善して参ります。どうぞ変 わりませず、本年もよろしくお願い申し上げます。 「皆様からの声」 ○食味は好評・外観に問題 ・完熟を待って収穫をしたため、食味は大変好評でした。てれども 過熟気味になった房は、外観に問題(変色・しみ・汚れ)がおきま した。 ・化学肥料を使わないため、樹勢からくる粒の大小差を生じたもの もあり、そのご指摘もありました。 巨大粒化を図れば、食味の低下が伴い化学肥料の使用も避けられな くなります。 大変気を使っておりますが、尚一層の研究と努力が必要です。 ○単一品種か各種詰め合わせか ・人気No1は、瀬戸ジャイアンツ(桃太郎ぶどう)。これとアモー レの組み合わせに希望が傾き、次いでハイベリーとの組み合わせに 人気が殺到しました。 ・各種詰め合わせも根強い人気をいただいております。ただ、品種 の指定はお受け出来ないので(生産量と収穫時期が一定でない)毎 年、同じ詰め合わせになる場合も起こり得るのでご了承ください。 ○出荷時期 関西の旧盆(8月13〜15日)直前の贈答用にと毎年お問い合わ せをいただきますが、現況では9月からの方が美味しいので止むを 得ません。どうかお許しください。 ご予約をいただきながら、お届けまでに日数がかかり、申し訳ござ いません。単品詰めのように参りませんので…。本当にすみません。 ○ご来園の希望について ・栽培の現状をご覧になりたい方 7月下旬〜8月上旬のみお受けします。(まだ試食はできません) ・色々なぶどうの味見がしたい方 10月下旬〜11月上旬のみお受けします。前もってご連絡下さい。 ※どちらの場合もぶどう狩りはしておりませんのでご了承下さい。 ●今年の抱負と課題 世界・日本そして私達を取り巻く経済事情・農産物の生産・消費の 事情等の厳しさは、今年も緩和されそうにありません。 農業は、輸入農産物や国内産地間競争の激化、円安からの生産資材 の上昇等益々厳しくなると思います。 我が家では、可能な限り安価で新鮮・美味そして何と言っても安全 なぶどうをお手元にお届け出来るよう励みたいと思います。 更に皆様に信頼され可愛がられて生き残れる園にしなければと思っ ています。 大変な課題です。どうか皆様の本音を聞かせて下さいませ。そして お知恵も拝借させていただければ幸いです。 ※近いうちにEメールが出来るようになります。 ●ニュースを二つ… その1.「瀬戸ジャイアンツ」(桃太郎ぶどう)を昨年も皇居へお 送り下さった友人から、大変お喜びになられたとご連絡を受けまし た。学習院時代に陛下のご学友でいらした方を通してお届けしまし た。自由にお送りできるといいのですが…。 その2.イタリアから料理関係の視察団が20名ばかりご来訪。 倉敷のホテルで「桃太郎ぶどう」を召し上がった時に一言。 「ぶどうはイタリアが量も質も世界一だと自負していたが、日本に 世界一美味しいぶどうがあった」と驚嘆されたそうです。そして、 「このぶどうの育種者に会いたい」とも言われたそうですが、日程 の調整がつかず、帰国されました。残念でした。 この評価に恥じない「桃太郎ぶどう」を皆様にお届けしなくてはと 責任を痛感しています。 ●新品種の開発 今、2次選抜・3次選抜をしている多くの実生の中から選んだ固体 を、更に特製を発揮させる管理を継続しています。黒いピッテロ型 のぶどうが出来るかも知れないと期待しています。 また、新規交配種計画も立てており、若手農業者数名が育種の後継 者として名乗りを上げてくれ、夢が広がっています。 息子達も交えて手法を学んでくれたらと願っています。 ●狂牛病?まさか? 畜産物の質や安全性が問われている昨今です。安さを求める果物や 野菜の輸入も同じ危険を感じます。だからこそより安全で美味なぶ どう作りに挑戦しなければと研究しております。 ●現在ぶどう園は 今年は一旬早い陽気に誘われ、桜と同じようい生育が進みハウスで は芽が伸び始めました。毎朝、ハウスに様子を見に行き、新芽の伸 びる姿に感動を覚えます。 「今年こそ、もっと素晴らしいぶどうに育てるぞ!」と思わず手に 力が入ります。2月は剪定を終え、堆肥を使って土作りをしました。 3月は粗皮剥ぎ、巻きづる取り等越冬病害虫の駆除につとめました。 4月は、新芽が一斉に伸び始めているので「芽かぎ」をします。 一平方メートル当たり5〜6本宛になるように余分な芽を取り去ります。 残した枝は十分な養分供給と光合成に恵まれ、よいぶどうが稔る基 礎体格を作ります。 5月は房作りです。一房に千粒余りついている蕾を整形し、数百粒 の蕾にして実止まりをよくします。 6月は粒間引きをして一房の粒数を整え、房の大きさを決めます。 7月頃より着色が始まり、8月末に収穫を迎えます。 「お父さん、もう芽の出ている樹がありますね」 「太陽が出ると温度が急上昇し、少しでも雲に隠れると10度ぐら いすぐ下がるのですね」 と、植物を可愛がる心の育っている恵子は、細かく観察しながら手 伝ってくれます。大変なハウスの管理もずいぶん楽をしています。 恵子のおかげで。 ●主人から原稿をもらったのは1月でしたのに何度ご挨拶の文章を 書き直したことでしょう。気乗りしなくて。 「パソコンで打とうかしら…」と話しましたが、主人にも恵子にも 却下されました。 「病気で寝込むとか、字が書けないとかいう状態なら別だけど…」と。 本当にそうなんですよね。辞書も引けるし眼鏡をかければ見えるの ですから。 途中まで書きかけていましたので、あとはお便りでも書くつもりで 気楽に書く事にしました。研究とは縁のない話ですが、人間リラッ クス出来るとまた次の元気が湧いて来ますもの。 自分から始めたこのお便りですが、少々重荷になり始めました。 どうしたのでしょう。今回は特に。 きっと、ぶどうの事がよく分からないのに分かったように書かなけ ればならない事が苦しいのでしょう。私にとっては。 ”勉強が足りないからだ”と主人の声が聞こえますが…。 500名もの「お客様」「果樹栽培を楽しむ会」の皆さんのボラン ティア、アルバイトして下さる「お友達」の苦労、無償で手伝って 下さる「親友」の慰め等々、我が家は多くの皆様に支えられて成り 立っています。ありがとうございます。そして何より力強い味方は 恵子の明るい一言です。「お母さん大丈夫ですか?」と。 続き(第14号)を読む 前(第12号)へ戻る 第13号PDF形式