●暑中御見舞い申し上げます
皆様いかがお過ごしでしょうか。今年もまたぶどうのご案内をさせ
ていただける季節を迎えました。
このところ天変地異、社会人心不安等々2000年紀を望むには
何か悲しい思いが致しております。
しかし、私共の研究所の農場では、日本の気候風土に適したマスカ
ット系ぶどうの研究開発に着手して以来37年目を迎えますが、
その間に交配して蒔いた種から次々と未来の夢を膨らませてくれる
新しい実が続々と稔っています。
そして外国品種よりも私の改良種の方が皆様に喜ばれる日が近い将来
必ずやって来ると思っております。僅かずつでもそうした品種が
ご賞味いただけ、ご批評いただけるなら幸いです。
「詰め合わせ」ぶどうの中で私の育成したぶどうの代表的なものを
ご紹介します。
@「瀬戸ジャイアンツ」商標登録(桃太郎)
昭和54年にソビエトの「グザルカラ」に「ネオマスカット」を交配
して育てたもので平成元年に登録をとりました。
皮のまま食べられ巨大粒、種なしに出来るとあって、口に入れると
シャキッとした歯ごたえ「エッこれがぶどう?」と初めて食べられた
方々には今までのぶどうと異なる美味しさに新しい驚きと感動を呼び
起こすとも言われています。一番人気のぶどうで私の代表作でもあり
ます。
皮ごと食べられるため、ポリフェノールは勿論、制ガン物質のリスベ
ラトロールがとても多く含まれていると言われています。とにかく
美味しいぶどうです。是非ご賞味ください。
A「マスカット・デューク・アモーレ」愛称「甘太郎」
「瀬戸ジャイアンツ」と並んで人気のあるぶどうです。
昭和58年に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」に「ブラック
三尺」を交配して育てたぶどうです。
平成6年に登録申請、平成10年に登録されたものです。マスカット
の香りとはじけるような歯ざわり、上品な甘さはM.アレキサンドリア
を凌ぐものがあります。
今年は種無しに挑戦し、90%以上成功しました。

「瀬戸ジャイアンツ」と「マスカット・デューク・アモーレ」の2つ
のぶどうは、私の力で作り出したものとは思えず、神が私に与えてく
ださったぶどうだと思っています。

B「ハイベリー」
昭和52年に交配、平成元年に認可。開発初期、「ブラックマスカ
ット」と命名していましたが、農水省へ登録の時、変更を余儀なく
され「ハイベリー」となりました。しかし、ベリーAを連想される
方が多く、ネーミングの失敗です。
マスカット系の黒巨大粒の種なしで皮もたげられ、これも上品で美
味しいぶどうです。ただ、脱粒や裂果が稀になります。量が少ない
ため一部の方にのみご賞味いただくようになります。

C「ブラック三尺」
昭和52年に「紅三尺」と「グザルカラ」の交配を行い、昭和62
年に登録。源流はシルクロード、中国から日本に渡った長大な房の
白色の「甲州三尺」を改良した黒い三尺ぶどうです。
大きく作れば一房50〜60cm、2kg以上になりますが、数品種を
詰め合わせるために小形化しました。長大房は次年度分なら予約
受付けます。(30房限定)

D「マスカットフルーレ」群
唐辛子のタカのツメに似た、イタリアの有名な「ピッテロビアンコ」
を改良した赤黒等の新品種です。親を完全に超えたおいしい珍しい
品種です。

このほかにも「秋峰」「花澤21号」など美味しいものが出来ています。

●ぶどうの管理を少々…
日々生長を続けるぶどう。その管理の一端をご報告します。
今年の春3月、発芽前頃、低温で生育が遅れました。最近は日照に
恵まれて前年並となりました。
収穫は、詰め合わせる全品種の食味が揃って良くなる8月下旬頃から
と思われます。(これからの天候に左右されますから)

ア.冬 1〜2月 剪定
樹の健康、樹齢、地力の診断をもとに、枝の芽数を考えて切ります。
イ.春先 3月 薬剤散布
発芽前の越冬病害虫を防除します。これが減農薬栽培の決め手です。
ウ.発芽初期 4〜5月 摘房・摘芽
一節の芽から1〜3本発芽し、各枝に1〜3房ついています。一定
面積内の枝数・房数を調節して、不要な枝や房は早めに摘み落とします。
エ.開花前 5月下旬〜6月上旬 摘心・整房
枝が伸びるのと開花が重なるため花房に必要な養分を十分供給する
よう枝の長さを制限(摘心)したり、大き過ぎる花房は不要な部分
を切り縮め(整房)ます。
オ.開花後 5〜6月
植物ホルモン(ジベレリン)処理
種無し品種を作る場合は、2回ジベレリンを房にかけます。
カ.幼果期 6月 摘粒
一粒の大きさと粒数で一房の大きさが決まります。一粒ずつの肥大
する間隙も必要です。一房数百粒の中から40〜60粒に調節します。
キ.袋かけ 6月下旬〜7月上旬
房の仕上がったものには果袋をかけて病害虫から守ります。
ク.その他
ぶどうは雨にぬれると病気が多発します。減農薬栽培には特に注意
が必要です。毎日の温度管理も大切です。ハウスの天井や側面の
フィルムの開閉と数日おきの潅水が良品生産の鍵となります。

●今気をつけていることは
・結果量の点検
樹の健康や実の生育状況を観察して、美味しいぶどうにするために
どれくらい実をならせるか判定し、余分な房は落とします。
・枝葉の点検
葉の面積や健康度、光合成能力等を見ながら枝葉(樹相)の長さや
密度を摘心してコントロールします。

●嫁ぐ日まで大切に!
このように美味しいぶどうを作るため、発芽の頃から毎日ぶどう
との対話が続きます。嫁ぐ日まであと幾日と指折り数えながら、
一時たりと手は抜けません。
今、袋をかぶって日々生長している姿を皆さんに見ていただけた
なら、新しいぶどうの見方が生まれるのではと常々思います。
(花澤 茂)

●沢山の人々に支えられて出荷の日を待っています
お便りを書き始めて4年、主人がこんなに張り切って原稿をくれた
のは今回が初めてです。
・ぶどうの案内は?とご連絡下さった皆さん
・農作業を直接お手伝いいただいた皆さん
・「注文します」とFAXなどでご連絡下さった皆さん
・”無理をしないでヨ”と心配して下さった皆さん
・今年の出来はどうかと作柄を見に来て下さった農家の皆さん等々
本当に沢山の方々に支えていただき、我が家は成り立っております。
ありがとうございます。
また4月から長男夫婦が帰って来てくれ、私共を少しでも楽にさせ
ようと努力してくれているようです。
長男はまだ仕事をもっており、神戸の方へ単身赴任しておりますが
嫁の恵子がこちらへ残って事務的なことを全般的に少しずつ覚えて
助けてくれています。
ただ地域にも慣れておらず農業経営にも慣れていないので色々気苦労
が多いことだろうと思います。急がず、あせらずお互いに慣れてい
こうと考えております。
電話の応対などお一人お一人のお名前を十分に把握出来ておりません
ので失礼があるかも分かりませんがお許し下さい。
果物大好き、野菜大好き、花や緑も大好きなお嫁さんです。きっと
ぶどう達も大歓迎をしていることでしょう。近くにいる二男の嫁
やす江とも仲良しで、私が姑であることを忘れるようです。二人
の嫁のパワーをもらって私もがんばらなくちゃ!

●出荷は九月からの予定
例年通り九月から出荷になると思います。気象状況によりますが、
なるべく早くとは思っております。どうなりますか。今年もどうぞ
よろしくお願い申し上げます。
10月8日から1週間は主人の都合で出荷が出来ません。ご了承
下さい。

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