研究所5月の話題
 
ハウス内で育つぶどうは、気象の乱れにも負けずたくましく順調に育っています。しかし、国内外の政治、経済など社会の動きは甚だ深刻で、不安の多い時代となっています。私たち研究所スタッフは、ぶどうの収穫時期までには回復できること、せめてその兆しでも見られることを願いながらぶどうの手入れに汗を流しています。
(左写真は江尻農場畦畔のジャーマンアイリス満開)
☆ぶどう生長と管理
 【生長】
5月晴れが続き、生育が促進され、上旬からハウス内ではタネナシ化処理が始まり、下旬には露地栽培のぶどうも順次処理が続きました。すでに、早いぶどうは小梅粒位に生育しています。
【管理】[枝の摘心]
新梢は1本に花穂を2〜3房つけて伸び続けます。約10節位伸びた頃、芯(枝先)を摘み取りました。伸びる力を花穂生長に集中させます。尚、続いて各節から出る側芽も1〜2枚葉を残して順次摘み取ります。6月末頃まで続きます。
[花穂の手入れ]
収量の安定、品質の向上を図るため、原則として新梢1本に1房ならせるよう、多すぎる花穂を除去します。残された房は養分を十分もらって大きくなり開花に向かいます。1房に花蕾が、1,000〜3,000粒も着き巨大化します。結実歩合をよくするため、大きすぎる房に今後の生長を考えて、開花が近づくと小さく切り込み整えます(整房)。
[誘引]
普通、枝を誘引(枝を倒し棚へバインド線でくくる)して房を棚の下へ下ろし、次の花穂の整形作業がしやすいようにするのですが、瀬戸ジャイアンツの枝は、風でも折れるし、触れるだけでも折れ易いので困ります。上手に棚付けする方法について勉強しました。野上さんが手伝いに駆けつけて下さいました。枝の持ち方・倒し方 など、2年目のバイトさん達を指導して下さいました。


[タネナシ化処理]
整形された花穂は生長し、開花します。完全に咲き終わった房は順次生長ホルモン(ジベレリン12.5〜25ppm)溶液に浸します。すると、種子を形成しないまま果実が肥大を始めます。1回処理後2週間後もう1回処理すると立派な粒に生長し、やがて熟成します。



[粒まびき]
開花後の房には小さな実がたくさん密着(数百粒)しています。そのため、1粒づつの本来の大きさを考え、生長する間隙を与え、かつ、1房の大きさを考えてハサミで1粒づつ摘み取ります。例えば、1粒15gなら30粒〜40粒にすれば500〜700gになります。これらの作業は全て手作業で、粒に傷つけないように行われます。年間で一番緊急かつ技術を要する仕事です。粒が日増しに大きくなるため、目下多忙を極めています。
[病害虫防除]
発芽後生長と気温の上昇に伴い、自然界では病害虫も活動期を迎えます。今季は前年より農薬の力を少し多めに使い、徹底して病害虫の棲息密度を下げたいと計画しています。
・第1回   5/9        
 ウドンコ病、カイガラムシ防除
 →トリフミンとアプロード

・第2回   5/29      
 ウドンコ病、アザミウマ防除
 →アーデント+ベンゼコブ

[温度管理]

夜間保温を終える。
最低気温が10以上となり、横窓は昼夜解放
天窓は最低気温15になるまで夜間のみ閉めます。下旬には天窓も開放し、雨の時だけ閉めます。
[水分管理]
目下毎日午前中1回約5〜10mm
☆その他
瀬戸南高等学校園芸科2年生 育種技術の指導
昨年に続き今年も2年生28名と先生方4名が交配育種の研修に見えました。交配育種の原理と手法実技を指導しました。美味で珍しい新品種の誕生が期待されます。

事前授業で瀬戸ジャイアンツの学習をしっかりしてきていたので今年はほとんどの生徒が熱心に取り組み、放課後し残した部分を完成させるため3日間来ました。

世界の格言です『種苗を制するものは農業を制する』

ぶどう苗木の接ぎ木発根状況と植え出し
昨年末に優良母樹から穂木を採取し保存。3月下旬頃に台木に接ぎ木して集中管理したものです。4月中旬頃より発芽と発根が始まり、5月上旬活着状況を診断し、育苗園(熊山・則武氏)植え出しました。

スタッフ誕生日 祝い昼食会
誕生者を祝い、作業の反省を行い、親睦を図っています。繁忙期以外は手作りで肩の凝らないお料理を考えています。